日本では北海道でしか見られない生き物が数多く生息しています。「ミヤマカケス」もそのひとつです。道東の庭に作った鳥の餌台に、突然、ミヤマカケスが来たのです!近距離で見ると、色彩の美しさと行動の面白さに驚かされる、カラスの仲間でとても愛嬌のある野鳥です。本記事では、その観察記録と行動の特徴をまとめています。ミヤマカケスとの出会い

11月初旬の朝のことです。
リビングから庭を見ながらコーヒーを飲んでいると…
「え?今、一瞬、すごい鳥が来たぞ。」
最初の印象は、そんな感じでした。
「なんか大きな鳥が降りてきた!」と思ったのもつかの間、すぐに飛び去ってしまいました。動きが素早く、警戒心の強い鳥だと感じました。
「なんていう鳥だろう…」
色が面白いのと、鳩くらいのサイズだったので、インパクトが強く記憶に残りました。
主人が持っている野鳥図鑑で調べてみると、「カケスかな?」と思いつつも、どこか少し違う気がしていました。
インターネットでも調べてみると、この野鳥は「ミヤマカケス」と判明!
カケスの亜種で、北海道に生息するものを「ミヤマカケス」と呼ぶそうです。独特の色合いが印象的な鳥です。
行動観察|決まった時間に庭を訪れるミヤマカケス
私の“野生の勘”が、「きっと最初に来た時間と同じ頃にまた来る」と告げていたので(笑)、翌朝、リビングにカメラを構えて待っていました。
すると、来ました~!昨日と同じ時間。
朝7時5分頃、ミヤマカケスがやってきました。
4日ほど観察してみると、この時間帯にしか現れません。このタイミングを逃すと、その日はもう姿を見せないのです。
ただし、これは最初に観察した年の記録であり、翌年以降は日によって異なる時間にも現れるようになりました。
最初の年に来た個体は、必ず北の方角から飛んできて餌台に止まり、餌を食べ終えると南西の森の方向へ飛び去っていきます。
4回とも全く同じ行動でした。

たいてい30秒から1〜2分ほど餌台にとどまり、餌を食べてから再び飛び去ります。
どうやらミヤマカケスには“通勤ルート”のようなものがあるようですね。
観察記録|ミヤマカケスの餌の食べ方と動きの特徴
手持ち撮影のため、少し映像が揺れています。ご容赦願います。
なんだかカラスに似た雰囲気があるように感じます。
それにとても賢そうな顔つき!
餌を食べているときの動きがとても面白いですね。
普通に食べているときもありますが、それとは違う食べ方をするときもあります。
なんというか、カモメのヒナなどが、親鳥の餌を飲み込むときの動きにとてもよく似ているなと思いました。
喉の奥の方へ押し込んでいるような感じ。
この個体はヒナじゃないし、不思議な食べ方~。
もしかして、喉か胃にため込んでいるのでは?
それをどこかに吐き出して貯蔵する???
私は名前こそ調べますが、それ以上の詳しい生態は、できるだけ先に調べないようにしています。
だって自分の想像力や観察力を磨きたいし、観察して知ることや自分で考えることが最高に面白いからです。子どもの頃からこれは変わりませんね(笑)。
動物たちの本当の美しさは、見た目じゃなくその行動にあると私は思います。
ある日、いつものように、家の中から餌台のミヤマカケスをじっと見ていただけなのに、室内のわずかな動きを察知したのか、「ギャア!」と叫ぶように鳴いて飛び去っていきました。
なんか怒ってた???
すごく面白い声!(笑)
笑ってゴメン!
ミヤマカケスは、歩き方にも特徴があります。
庭の地面を移動するとき、ピョンピョンと跳ねるように両脚でジャンプして進みます。
この移動方法は、カラスにそっくり!
いや、むしろもっと軽やかで、遊んでいるようにも見えるんです。賢い鳥類ほどよく遊ぶ傾向にあるので、やっぱりミヤマカケスは賢い鳥なのかもしれませんね。
防草シートをめくって何かを見つけ、嘴にくわえていたこともあります。
飛び方は、羽ばたき→滑空(フワッ)→羽ばたき。という感じで飛びます。
この飛び方は、一体!?
森の方へ飛んで行くので、たぶん森で暮らしている鳥なんだろうけど、森には木がたくさんあります。その中を飛ぶとき、体の大きなミヤマカケスは、ビュンビュンとは飛べないでしょうから、こうした動きになるのかもしれません。
かなり特徴的な飛び方なので、今は遠くでミヤマカケスが飛んでいても分かるようになりました。
冬の間は何をしているのかな。
冬眠はしないだろうし、エゾヤチネズミのような暖かい寝床もないだろうから、羽毛がお布団のように暖かいのかなぁ。
などいろいろなことを想像して楽しんでいます。
なかなか面白い行動の多いミヤマカケス。なんとも興味深くおもろいやっちゃ♪
わずかな時間ではありますが、観察から簡単に考察したところで、ミヤマカケスとは一体どんな鳥なのか、学術データを見てみました。
答え合わせです。ワクワク♪
行動のしくみ|ミヤマカケスの生態と暮らし
分類と概要
ミヤマカケス(Garrulus glandarius brandtii)は、スズメ目カラス科カケス属に属する野鳥で、北海道に生息するカケスの亜種です。
英名では一般に“Eurasian Jay”と呼ばれ、北海道の個体群(ミヤマカケス)は“Brandt’s Jay”として区別されることもあります。

——なるほど。
私が感じた「カラスに似た雰囲気」「賢そう」「地面の移動方法がカラスにそっくり」という印象は、カラス科に属する鳥だったからなんですね!
生息地と特徴
北海道の針葉樹林帯を中心に生息し、体長はおよそ33cm前後。翼の青い斑点模様が特徴的で、カケスよりも全体的に色が淡く、灰褐色の羽をしています。
ミヤマカケスを含むカケス類(ヤマカケスなどの仲間)は
- 数千個単位に及ぶ餌場を記憶しているなど記憶力が極めて高い
- 猛禽類などの鳴き声を模倣し他の鳥や動物を欺いて「危険が近い」と錯覚させる
- 個体同士の連絡・警戒・位置確認などには他種の鳴き声を混ぜることで、より複雑な信号として機能している可能性があり“状況判断力”と“柔軟な発声制御”の高さが示唆される
- 「聞いた音を記憶し、再現する」という高次の認知機能
このように
“圧倒的な記憶力”や“防衛的な知恵”を持つことで知られています。
その知的な行動から、観察者やナチュラリスト、写真家などが自然誌やエッセイの中で「森の賢者(wise one of the forest)」と呼ぶこともあります。

——なるほど。
やっぱり警戒心の強い鳥だったのですね。餌台で“ギャア”と叫ぶように鳴いた行動に、私が「なんか怒ってる?」と感じたあの声は、警戒音だったんですね!
食性と貯蔵
ミヤマカケスは雑食性で、主に木の実・ドングリ・昆虫・小動物・他の鳥の卵やヒナなどを食べます。
食べ物は一時的に喉の奥(食道の拡張部)にため込み、それを安全な場所へ運んで埋める習性が知られています。
この行動は、秋になると顕著で、大量の木の実などを地面や苔の中、木の根元などに埋めて貯蔵します。これを「貯食行動」と呼びます。
しかもその隠した場所を、数千箇所単位で記憶しているとされるほど高い記憶力を持ちます。
この行動は冬の食料確保のためで、雪の中からも正確に掘り出して食べることができると言われています。

——なるほど。
私が秋に観察したとき「食べ方が面白い。喉や胃にため込んでいるのでは?」と感じたのは、まさにこの貯食行動だったんですね!
飛び方の特徴
ミヤマカケスの「フワッフワッ」とした飛び方は、羽毛構造・羽ばたきリズム・低空飛行での滑空が組み合わさった結果です。
- 体のサイズのわりに羽毛が柔らかく密生しており、羽ばたきの際に空気をよく捉えます。
- 森林内や庭などの比較的開けた場所での飛行では、急旋回や障害物回避が必要です。
そのため、高度変化を小刻みにして安定させようとする結果、羽ばたきの強弱やタイミングが不規則に見えます。

——なるほど。
私の感じた「森の中でビュンビュンとは飛べないからでは?」は、こんな理にかなった理由があったんですね!
年間の行動パターン
春から夏(繁殖期)
繁殖期のカケス類はつがいで縄張りを形成し、採餌・営巣ともに限定された範囲で行います。
巣のある林内や周辺で採餌し、巣立ち後もしばらくは同じ範囲内を回ります。
行動圏はほぼ一定で、日々の巡回ルートが形成されています。

——なるほど。
春から夏にかけて庭では見られないのは、このような理由があったんですね。
秋(貯食期)
木の実が豊富になる時期で、貯食行動が活発化します。
このとき“餌の隠し場所”を巡るため、特定のルートを繰り返し飛ぶようになります。

——なるほど。
私が観察した「同じ方角から来て同じ方向へ帰る行動」は、この時期特有の採餌・貯食ルートである可能性が高そうですね!
冬(利用期)
雪の中から貯食した木の実を掘り出すため、秋に使っていたルートをそのまま辿ることが多い。
つまり、秋の行動パターンがそのまま冬にも引き継がれるのです。
冬眠はせず、厚い羽毛によって体温を保ちながら、厳しい寒さの中でも活動しています。
ミヤマカケスの羽毛は、外側の風切羽と内側の綿毛状の羽(下羽)との二層構造で構成されていて、羽の間に空気を含むことで断熱層をつくり、体温の低下を防ぎます。
また、寒さが厳しいときには羽毛をふくらませ(膨羽)、その空気層をさらに厚くして保温効果を高めることが知られています。

——なるほど。
私が感じた「羽毛がお布団みたいに暖かいのかな」という印象は、羽毛そのものが高い断熱性能をもつ“天然の保温装置”だったんですね!
庭で出会ったミヤマカケス|森の賢者の観察を通して
ミヤマカケスは毎年10月下旬頃から2羽〜3羽、表の庭と裏の庭を訪れています。
それぞれの庭に設置した餌台で餌を食べ、裏庭のマツの枝に止まったり、地面をつつく姿も見られます。

ミヤマカケスの観察を通して感じたのは、“自然の中で生きるとはどういうことか”ということ。
ただ餌を食べているだけのように見えても、そこには記憶や工夫、季節への備えがちゃんとある。
まさに「森の賢者」と呼ばれるにふさわしい知性派の野鳥です。
私はカメラや撮影のことには詳しくありませんし、特に野鳥観察が趣味というわけでもないのですが、窓から見える庭は、私にとっても動物たちにとっても小さな森のような場所です。
そこにやってくる動物たちは、毎日同じように見えても、実はそれぞれの知恵とリズムの中で生きています。
そんな姿に、私は静かな感謝と尊敬の気持ちを覚えました。
本州に住んでいたころは、自然が遠い場所にありました。でも今は、私の生活圏のすぐ隣にあることを、ミヤマカケスが体現してくれています。
北海道に引っ越してきて本当に良かったと心の底から思っています。
ミヤマカケスを見た朝は、朝ごはんが美味しいです♪
ありがとう、北海道。
ありがとう。野鳥たち。
👉 ミヤマカケスの他にも庭を訪れる野鳥は、「秋冬の醍醐味!窓から楽しむウインドウガーデニング」でも紹介しています。
👉 本記事のような、庭で見られる生き物たちの観察と考察は、「動物の行動観察」のカテゴリーにまとめています。




